Think Hybrid.

ゴチャ混ぜにして、新しいものを創る。

Concept
研究のテーマ

マイクロ・ナノデバイス技術の異分野応用

東大生研 竹内昌治研究室は、大学院情報理工学系研究科と大学院総合文化研究科の2つに所属しています。
情報理工学系研究科からは、主に機械・情報・電気など工学をバックグラウンドにした学生が。
総合文化研究科からは、主に物理・化学・生命科学など理学を専攻する学生が参加しています。

工学・生物学・化学・医学など、いろいろな分野からの知見を「ゴチャ混ぜ」にして、
新しいものを創る…新しい研究分野や技術を創出することに意欲のあるメンバーの集まりです。

イメージ ※画像提供:竹内昌治研究室

Talk
対 談

竹内昌治研究室(ERATOの竹内バイオ融合プロジェクト)の特任研究員を務める安達さんと根岸さん。
お二人に「理系のオモシロさ」や「意外な理系の誤解!?」をお話していただきました。

私たちの研究 ~細胞をつかったものづくり~ Our Research私たちの研究 ~細胞をつかったものづくり~ Our Research

私の行っている研究はいわゆる
再生医療につながるバイオエン
ジニアリング分野です。
私の研究テーマでは、細胞をヒ
モ状、ビーズ状、シート状にして
組織を組み立てていくのですが、その感覚が文字通り、子供のころの手芸やブロック遊びに似ていてとても面白いですね。

これまでは、ものづくりの材料といえば金属や木材、樹脂などでしたが、私たちは細胞を使っていろいろなものを作ることを目指しています。細胞は、人工臓器のような医療分野はもちろん、食品や化粧品、さらにはロボットなどの機械分野にも応用できる、大きな可能性を持った素材です。これからは、細胞を使った「細胞製品」がたくさん生まれていくと考えています。

Q.理系って、やはり計算や理論が
中心の世界なのでしょうか?

根岸さん
根岸さん

確かに理系では、苦手意識を持つ人が多い「難しい数式の理解や計算」といったいわゆる数学や物理が重要な部分もあります。
例えばマイクロサイズの細胞ファイバ構造をつくるには、液体の流れを計算式から導き出される状態に正確にコントロールしないといけないんです。美しいマイクロサイズの構造は、計算式にあてはめることではじめて完成するんです。
でも計算ができれば完璧に仕上がるかというと、実はそうでもないんです。実際、計算はコンピュータがやってくれますし、むしろたくさんの資料を読み解く力、手先の器用さや、コツコツ取り組む忍耐力、時には運も必要になってきます。必ずしも理系の世界だからといって、難しい数式を理解できることだけを入り口にする必要はないと思いますよ。

安達さん

バイオと工学、さらに化学や医学などさまざまな分野を掛け合わせて、今まで誰も見たこともない、考えつきもしなかった「新しい形の細胞組織」が作れるかもしれない…このプロジェクトに関わると、計算や理論だけではないことを強く感じますね。

根岸さん

特にこれからの時代、生物だけとか物理だけ、化学だけといった理系の限られた領域を理解するのではなく、異分野への理解や協調した姿勢が重要になっていきますね。これは私たちの研究でも言えることです。例えば均一なマイクロサイズの組織を大量につくるのは細胞生物学の知識・技術だけでは難しく、工学・機械分野のマイクロ加工技術が必要不可欠になっています。
私は最近ではアーティストやデザイナーの方ともお仕事をさせていただいていますし、そういった方々とのお仕事がさらに新しい研究の可能性を広げてくれています。これが新しい理系のカタチじゃないかと思います。

Q.理系に進むにあたって、向き不向きや、
対策などはありますか?

根岸さん

こういう人が理系向き、といったような確固たる何かがあるわけじゃないと思いますよ。むしろ、少しでも興味があれば、それだけでもいいんじゃないかなと。そんなにかまえなくてもいいし、理系は特別なことじゃない、と考えてもらえれば嬉しいです。学生のうちは、“今やりたいことをやればいいんじゃないかなあ” と。計算とかそんなのあとからどうにでもなるから。(笑)

安達さん

私もそう思います。実は私はあまり数学が得意ではなかったので、逆に英語とか、そちらに重点を置いていました。理系の人は数学ができる人が多いので、自分の中で差をつけられるところをやっていました。
もちろん計算をメインでやっている研究室もあるけれど、そうじゃないところも沢山ある。広い範囲で知識を持っていたほうがいいかなと。 たとえば、家庭科が好きだったら、実験にも楽しく取り組めると思います。料理や裁縫も実験に通じるところがありますから。だから、たとえ数学や物理が苦手であっても、例えば車や電車、環境、食品など身近なモノの仕組みに少しでも興味があれば、やってみたらいいと思います。

根岸さん

それに理系って、研究室にこもってひたすら計算して、実験して、また計算・・・というわけでは決してないんです。
自分の研究を発表したり、研究者同士の交流会や勉強会があったり。特許を申請して会社を立ち上げる方もどんどん増えてきていますし、将来的にサイエンスライターやサイエンスアーティストになる方もいます。 極端な話、最初のきっかけは「動物大好き」、「植物大好き」といったスタートからでも問題ないと思いますね。
現に動物好きの友人は、犬のことが大好きだからという理由で「匂い」の研究を始めましたし、花を見たり育てたりすることが大好きな友人は植物研究者になりました。また、昔から文章作成に長けていた友人は、今サイエンスライターとして活躍しています。

実験風景

Q.理系学部の中で、
女性と男性の違いを感じることはありますか?

根岸さん

いい意味で違いを感じることはあります。
数年前、「ヒモ状の細胞でなんとか大きな組織をつくれないか」と、男性の先生方がずっと悩まれていて、女性スタッフにも尋ねてきたんです。そこで、女性スタッフが子供向けの織物グッズみたいなものをご紹介したところ、「コレ、コレ、コレだよ!この方法なら組織をつくれる!」ってなったんです。こういうのが女性ならではの発想じゃないかと思うんです。私たちの研究や開発の分野では、発想や着眼点も重要なので、男性ならではの着眼点や、女性ならではの発想はとてもありがたがられます。

安達さん
安達さん

実際には、発想の男女比は、同じくらいだと思う。
理系の女子が少ないという印象があるかもしれませんが、実際は理系の女子学生もけっこう入ってきているし、これからすごく増えるっていう印象がありますよ。私が大学に入ったころは女子トイレが少なかったりしたけれど、今は増設されていますね。この5年ぐらいかな、すごく変わりました。

Q.今後の目標などがあれば教えてください。

根岸さん

私はもともと理学・医学分野の出身なので、病気の原因解明や治療、薬の開発などといった人の役に立つような研究・開発をしたいという目標があります。何か自分が開発した技術とかモノが、ちょっとしたことでもいいから、医療の役に立っている成果を出せればすごく嬉しいですね。
それと、子供たちに理系の楽しさやおもしろさを、もっと知ってもらえるような活動もしていきたいです。

安達さん

私は、特任研究員として、ERATO竹内バイオ融合プロジェクトに参加する一方で、竹内昌治研究室発のベンチャー企業の立ち上げも行いました。それは、研究成果を社会にとって価値あるモノにしたいからなんです。先日、東大生研の山中俊治研究室とコラボレーションした展示会「ELEGANT CELL 細胞とバイオマテリアルの小さな実験室」(2016/02/17~23)では、根岸らが研究開発した”細胞ファイバ”を素材提供し、「デザイン×工学×生物」による、細胞を使ったものづくりへの新たな挑戦を試みました。
このように、多くの方々に私たちの研究を知っていただけるキッカケを提供していけたらと考えています。ERATO竹内バイオ融合プロジェクトでは、「細胞」をネジやバネ、歯車のように組み合わせ、全く新しい組織や組み合わせをカタチ作ることを目指し、研究を進めてきました。今後は、再生医療や創薬、培養肉、細胞センサなどへの応用に向け、研究者だけでなく企業とも連携し、より多くの方々に私たちの技術を知っていただけるよう、研究成果を広く社会へ情報発信していきたいと考えています。

対談風景

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